わたしのいもうと

妹は僕が生まれた3年後に母親の恥ずかしい場所からヌッと現れ、それ以来、僕が上京するまでの20年間を共に過ごしてきたのですが、性別の違いもあってか小さな頃から特に仲が良いわけではなく、お互い無関心な状態で大人になりました。

それが数年前から、少しずつですがお互いの話をするようになりました。
実家を出て家族に触れる機会が減り、だからこそ、帰ったときは今まで当たり前に過ぎて食傷気味だった家族との関わりに新鮮さ感じ、結果、妹が話す内容にも興味が出てきたのかもしれません。

否、そうではありませんでした。
妹が彼氏に振られたという話だったからです。

妹はお世辞にもお美しいほうではなく、むしろ米国の地下研究所が人類を第二段階へと進化させるために開発した異常発達系のおクスリを歯茎に集中的に打ち込まれ、ミツクリザメのように歯茎を前方にこれでもかと突き出す「深海魚スタイル」の第一人者といった風貌。

ガキョン!と工場で働く重機のような発射音を立てながら、歯よりも何倍も大きな歯茎を突き出しヨヨヨ…と失恋話を話す妹。

僕が「出てる出てる」と注意すると、「失礼」と前足で口元を隠し、初代ピッコロ大魔王がタマゴを産む寸前のような、明らかに無理をしている表情で突然別れを告げられたことに納得いっていないということを伝えてきます。

「ふんふん」と首を縦に振りながら「それでどうしたのか」と妹に質問してみますと、今際の際に目をカッと見開いて命の花びらを落とす老人のようなパワフルかつ淋しげな表情で「うち、遠距離やってんけど、納得いかんかったから夜中に車乗っていきなり行ったったんや」と事の成り行きを話し始めてくれました。

そして、マンションから出てきた彼を車に乗せ「なんでなん?こんなオモロイ彼女他におらんで?なんでなん?うち、こんなオモロイねんで?」と力説したそうです。

恋愛という甘くてとろりとしたモノに、自分のオモロさのドロドロソースをぶっかけて営業する妹は、そのときの現状をまるでその場で起こってるかと錯覚してしまうほど臨場感たっぷりに僕に教えてくれました。


「なんでなん? うち、こんなにオモロイねんで?」

さっきは閉まえてた立派な歯茎(マナの樹)は、再びしっかりと出現しておりました。


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2009.12.18 Friday category:豚日記 comment:-
プロフィール
  • シモダ テツヤ
  • 株式会社バーグハンバーグバーグ代表取締役 兼 初代オモコロ編集長。タイの安宿でみんなが小便をするところを洗面所と間違えて毎日顔を洗っていたことがある。
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